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揺れる恋 めぐる愛
第4章 愛しさと切なさ
この時この人が、心の隙間から中へと入ってきた……

瞬間だった。

そして、私が主任の何かを受け入れてしまった瞬間でもあった。


しばらくして主任が顔を上げると瞳はいつの間にか戻っていて、

口の端だけが上がるあの微笑みをこちらに向けた。

そして静かに私の左の耳に近づき、言い聞かせるように囁いた。


「嫌なら……

完全に拒絶しろ。

これっぽちもその気がないなら、それを俺に全力で示せよ」

これ以上隙間なんてないくらいに抱き寄せられた。

息もできない程強い抱擁に、その想いの強さを思い知らされる。


そして抱擁を緩め、ゆっくりと腰から手を沿わすように巻き付けてきた。

もうさっきのような力は籠っていない。

これなら、女でも振り払って逃げられそうで……

主任は私をもう一度試しているのだろうと思った。


「俺なら、お前みたいなタイプは絶対にどこにもやらない。

どこにもいかせない。手もとから離さない。

なのに、やつは……

そうしたんだろ?今、拒絶しないなら……

覚悟しろ」

射抜くように見つめられたその目は底知れない闇のようで……

怖かった。

そんな怖い目を見ても、私の躰はその手を振り払うことも……

席を立つこともできなかった。


私は主任の言うとおり、覚悟もない癖に……

完全に拒絶することができなかった。
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