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その瞳に…
第27章 目覚め
(・・・もう、朝?)

 まどろみの中、外から聞こえる鳥の鳴き声と車の音で、舞奈の眠っていた意識がゆっくりと覚醒してくる。

 (あったかい・・・まだ、起きたくない・・・)

 とても安心する暖かさと、香りに包まれ舞奈は目覚める事を拒み、寝返りをうとうとするが、体が動かなかった。

 (あれ・・・)

 なぜ体が動かないのか疑問に思い、舞奈はしかたなく目を開けると、目の前には安らかに眠る大河の顔があり、その腕はガッチリと舞奈を抱きしめていた。

 (そうだ、先生の家に泊まったんだっけ・・・)

 チラっとベッドの上にある時計を見ると、まだ五時前を指していた。

 舞奈は、段々覚醒してきた意識で、昨日の事を思い出す。

 渡辺に痴漢行為をされ、エゴイストまで逃げた事。

 啓介に泣き付き、大河が店まで来てくれたこと。

 渡辺の情報がわかり、大河がその対応をしてくれた事。

 そして、大河の家に泊まりに来たこと――――――――――

 全てをしっかりと思い出した後、舞奈は不思議な気持ちになった。

 何故か、渡辺にされた事を嫌悪はするが、恐怖が一切沸いてこなかった。

 公園で襲われた時もそうだった。

 その時はとてつもない恐怖に襲われたいたが、大河が寝るまで傍にいてくれたお陰で、次の日もあまり恐怖はなかった。

 そして、今も大河の傍にいる事で、とても落ち着いていられる。

 (私って思ったより神経図太いのかな・・・ううん、違う・・・)

 自分が恐怖に苛まれず、こうして穏やかにいられるのは、やっぱり大河のお陰なんだと、舞奈は思った。

 昔から思っていた、誰かに心も体も支配して欲しい感情。

 今それは大河で全て満たされている。

 そのお陰で、舞奈は自分を保っていられるんだと、再確認した。

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