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その瞳に…
第28章 大人の対応
 「そんなに何度もお礼を言わなくても良いのよ。私達は誰も強制されていないのだから。みんな貴女を助けたくしてしただけなの。ね」

 その優しい言葉に、舞奈は引き下がらずにいた。

 「あの、じゃあせめて何かお礼をしたいんですけれど・・・」

 学生の身なので、そこまでしっかりとしたお礼など自分には出来ない事が解っているが、それでも今回助けてもらったお礼をしたく、舞奈は早百合に何が良いかを問いかけた。

 そんな舞奈を見て、早百合は少しだけ困った様な表情をするが、またいつもの優しい微笑みをすぐに浮かべる。

 「なら、また近いうちにお店にいらして。栄子も来てと言っていたし。貴女の元気な姿を見れば成滝も喜ぶでしょうしね。それでどう?」

 早百合の提案に、舞奈はでも・・・と思う。

 「それで、皆さんに対してのお礼に、なりますか?」

 「ええ、もちろん。成滝が喜ぶ事が、私達にとって一番なのだから。成滝も、貴女が山村さんの横に居てくれる事が嬉しいの。だから、それで十分なのよ」

 その言葉が心からのものだと、とても美しく微笑む早百合の言葉に、舞奈は、感嘆の息を漏らす。

 大河から聞いてはいたが、本当に早百合達は成滝の幸せを一番に考え、生きていると言うのがその表情と言葉から良く伝わってくる。

 成滝も、大切な友人が幸せなのがきっと、とても嬉しいのだろう。

 きっと、大河に出会う事がなかったなら、舞奈は早百合達の気持ちがあまり理解出来なかっただろうと思う。

 けれど、今ならその気持ちがわかる。

 舞奈自身も、大河が喜び、幸せと感じる事ならば、きっと自分の出来うる限りの事をするだろう。

 大河が、自分を必要としてくれている限り、きっとそれは何時までも続く感情だと思う。

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