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その瞳に…
第30章 SとM
 「舞奈、こっちへ来なさい」

 大河は手を差し出し、舞奈に命令する。

 おずおずと、舞奈が手の届く所まで歩いてくると、大河は鎖を握りしめ思い切り引っ張った。

 「あっ!?」

 ドサリ

 勢いで舞奈は大河の膝の上に倒れるが、グイっと鎖を引き上げられ無理矢理上を向かされる。

 目の前には、冷たく微笑む大河の顔。

 その表情に、舞奈はゾクリと体を震わせ、更に蜜を溢れさせる。

 「っあ・・・」

 支配欲に満ちたその瞳に、舞奈は悦びの吐息を零す。

 体を震わせる舞奈に、大河は唇が重なる程近づき、囁く。

 「さあ、舞奈。抱いて欲しいなら、奴隷らしく僕を悦ばせなさい」

 「はい・・・」

 舞奈は、返事をし、そのまま唇を重ねる。

 初めは軽いキス。

 そして、ゆっくりと口の中に舌を差し込み、大河の舌に絡ませる。

 いつもは大河にしてもらっているキスを思い出しながら、舞奈はぎこちなくも舌を動かした。

 舌を絡め、歯茎をゆっくりと舐める。

 けれど、大河がしてくれた様に上手く出来ず、キスだけでゾクゾクする事がない。

 その証拠に、大河の表情は一切変わらなかった。

 舞奈は悔しさで、瞳が熱くなるが、泣いてる場合じゃないと!意気込んでもう一度、大河がしてくれたキスを思い出しながら、舌を動かす。

 すると、唇を大河の方から離してきた。

 「あ・・・」

 唇を離され、愕然としていると、大河は零れた唾液を指で拭い、ふぅと小さくため息を吐く。

 そのため息に、舞奈の胸はズキリと痛み、床にへたり込む。

 (呆れられた・・・?)

 全身に絶望が駆け巡り、恐怖で体が震える。

 すると、また鎖を引かれ体を持ち上げられる。

 そこには、意地悪く微笑む大河いた。
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