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その瞳に…
第37章 日常の中の非日常
 なんにせよ、と大河は舞奈の頭をポンポンと撫で。

 「舞奈を家族に紹介するのは卒業してからだし。あいつが何かしてきたら、それこそ兄弟の縁を切ってでも舞奈を守るから、あまり心配しなくても良いよ」

 その言葉に、舞奈は嬉しさと恥ずかしさで涙が出そうになり、下を俯く。

 (嬉しい・・・)

 卒業後、大河が家族を紹介してくれるなんて、はっきりと大河から結婚等の言葉は出てきてはいないが、舞奈は期待が高まってしまう。

 卒業にはまだ一年以上あるが、早く卒業したいと心の奥底から思ってしまう。

 「もし影で何かしてきたら、早百合にもいいなね。この間、早百合怒らせてこってりと絞られてから、早百合が怖いみたいだし」

 「へ?」

 そわそわする心を落ち着かせる事が出来ずにいた舞奈は、成滝の一言であっさりと冷静に戻る。

 「え?早百合さんて、怒るんですか・・・?」

 人間なのだから当たり前の事なのだろうが、舞奈は目の前でニコニコと微笑む早百合が、怒る所を想像出来ない。

 「たまには私も怒るわよ。あの時は開店前で英樹が忙しかったのに、それを邪魔したからちょっときつめに怒ったのだけれどね」

 にっこりと微笑む早百合の『ちょっと』と言う言葉が強めに発せられた事に、舞奈はゾっとする。

 (そうだ、この人成滝さんの事に関してはかなりアレな人だったんだ・・・)

 昨夜も大河の行動を止めてもらおうとヘルプを出した舞奈に対して、『英樹が見たいから』と言う事であっさりと舞奈を突き放した。

 (多分、先生よりも怒らせちゃいけない人だよね・・・)

 まだまだ早百合の事をちゃんと理解出来てはいないが、舞奈はその優雅な笑顔の裏側にある、早百合の底に恐怖を抱き、早百合には逆らわないでおこうと、心の中で誓った。


 
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