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その瞳に…
第38章 冬休み
 「どうせ今の学校は臨時で勤めているだけだし、もし講師として前の職場に戻れなくなっても、僕は構わないよ」

 女性に解らせるように、ゆっくりと声を荒げる事なく大河の言葉は発せられる。

 「証拠もない匿名のリークなんて、2・3年でなかった事になるし、別に他の職に移ったって僕は全然構わない」

 だけど、と大河は強く続ける。

 「今の彼女と別れる事は何があっても、絶対に無い。あの子が本気で僕を拒絶しない無い限りね」

 はっきりと聞こえてきたその言葉に、舞奈は美和がいる事も忘れ涙ぐむ。

 (先生・・・)

 教壇に立っている大河はとても楽しそうだし、教えるのが好きだと言っていた。

 そんな大河の悦びを自分が奪うことにはなりたくなく、付き合いは慎重にしていた。

 しかし、大河はそれよりも自分を選んでくれた事が、舞奈にとってはとても嬉しくなった。

 「だってさ~。良かったねぇ、舞奈。愛されてんじゃん」

 ポソっと頭の上から呟かれた声に、舞奈ははっとし、絵麻を睨みつける。

 が、絵麻は自分じゃないと言う様に首をブンブン振り、美和を指した。

 「え?美和、なんで・・・え?」

 まさか美和からそんな言葉が出てくるとは思いも寄らなかった舞奈は、困惑した顔で美和を見上げる。

 「え?なんでって・・・違うの?」

 キョトンとした顔を浮かべた美和に、舞奈はそうだとは流石に言いづらく口ごもると、美和は言葉を続けた。

 「普段の舞奈が山セン見てる視線が恋する乙女だから舞奈の好きな人山センか~って思って。でも、舞奈彼氏いるって言ってたじゃん。で、山セン観察してたら山センもそれっぽい目で舞奈見てたからそうかな~って」

 (まじか・・・)

 得意げに話す美和に対して、舞奈は頭を抱えてしまう。

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