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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔




「杏璃の意見なんて聞いてない。あとさ、夏休み中にどこか行くよ。僕の貴重な時間を割いてあげるんだから感謝してよね」


「は? はぁぁ!?」


 自分の意見を却下されるだけならまだしも、なぜ司と出掛けなきゃならないのか。それも向こうから誘っておいて、感謝しろとはなんたる言い分。


 怒り心頭な杏璃の低くてドスの効いた声が、闇夜に突き抜ける。


「なんで私があんたと出掛けなきゃなんないの!? 一瞬たりとも一緒にいたくないのに!」


「ああ、勘違いしないで。僕だって杏璃と過ごしたいわけじゃないから。ただ根掘り葉掘り聞いてくる人がいるんだよ。彼女とどこ行っただの、彼女といつも何してるのだの。杏璃と一緒の時に聞かれて、話が合わないと上手くいってないとか思われても嫌だから」


「そんなの適当に合わせるからいいわよ」


「だーかーら。それが出来るんだったら、最初からこんな会にだって参加してないよ」


 苛立ちを滲ませる声色の司。


 あんたにイライラしているのはこっちだと言ってやりたくて堪らなくなる。







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