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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔




 司に連れてこられたのは、コテージを抜けた人気のない川辺だ。そよぐ川の音と、天まで届きそうな高い音で鳴く虫の声に混じり、司の大きな嘆息が耳に届く。


「野蛮な連中と一緒にいるのは疲れる」


 ……だったらなんで来たのよ、と文句の一つも言ってやりたくなる。


「疲れたなら、一人で休んでて。私は戻るから」


 素っ気なく伝えると、嫌味な口調が返ってきた。


「はぁ? 杏璃をわざわざ連れてきた理由解らないの?」


「解らないし、解りたくもありません」


「あのさぁ。今日ずーっと思ってたけど、取引きの内容覚えてる?」


 いちいち癪に障る言い方をする男だ。こんなのとよく三年も付き合ったものだ。


「僕の防波堤の役割ちゃんと務めてよ。今だって杏璃を連れてこなきゃ、酔っぱらったフリして僕に抱き着いてきたりする女がいたらどうすんのさ」


「そんなの知らないし」


「だからそういう態度、どーにかしてくんない? 僕らが相思相愛のカップルってことが大前提で、女狐共に狙われずに済むんだけど」


「前みたいに接しろって? 無理があるでしょ」


 この男は何を考えているんだ。彼女のフリだけでも苦しいのに、好きという気持ちまでアピールしろと?









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