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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔



 物覚えも良く、ルルがしでかした失敗を真剣に叱ると、やってはいけないと理解するらしく、二度は繰り返さない。


 逆に褒めたことは飽きることなく幾度と繰り返す。その都度大袈裟なほどに褒めてやると、ルルは喉を鳴らして喜ぶものだから、その愛らしさに総一はだんだんと情が湧いてきていた。


 仕事中、家に独りで置いてきたルルがどうしているか心配になったり、早いところ仕事を終わらせて帰宅したくなるくらいには、彼女に情が移っていたのだ。


 定時を一時間ほど過ぎた頃に仕事が片付いた総一は、自宅近くのスーパーでルルが好みそうな魚を買い込み帰宅した。


 玄関のドアを開け「ただいま!」と一人暮らしだった時には考えられない弾んだ声を出す。ルルが嬉しそうに駆けてくる姿を想像すると、顔が自然と緩んでしまう。


 しかしどういうわけか、ルルが一向に来る気配がない。


「ルルー? おーい」


 まさかいなくなってしまったのかと不安に駆られたのもつかの間、カタンと音がして「にゃぁ」と弱々しい声がした。


 どこにいるのか探すまでもなく、トイレのドアが僅かに開いていて、総一が取っ手を掴んで開けると、びしょ濡れになって泣きながらうずくまるルルの姿を認めた。





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