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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔



「ル……ルル! どうしたのこれ」


 驚いた総一が声を上げると、ルルはビクリと肩を揺らし、泣き濡れる瞳を向けてきた。


 彼女が着ている総一のTシャツやジャージもずぶ濡れで、床も水溜りが出来てしまっている。


 こんな状態になる可能性は一つしかない。間違ってなのか、うっかりなのか、ウォシュレットのボタンを押したのだ。


「あー……やっちゃったか」


 総一は後頭部をボリボリ掻く。トイレに行ったら紙で拭いて水で流す工程は教えていた。便座の横に付いているボタンは押さないようにと念も押していた。だからわざとではないのは明らかだ。


 しかしルルは失敗してしまったことを彼女なりに察し、叱られると思って泣いているのだろう。


「ルール? わざとじゃないんでしょ? だったら怒らないよ」


「……ソーイチ、ルルおこらない?」


「うん、怒んない。悪戯だったり、遊びでやったりしたら、総一は叱る。いい?」


 たどたどしい口調のルルに宥めるように、そして諭すように優しく言う。


 彼女は理解したのか頷いて、「ごめんね、ソーイチ」と呟いた。


 総一はそんなルルに微笑んでから周囲を見渡し「こりゃあ掃除……の前にお風呂かな」と、いつからだろうか濡れたままのルルを見遣って困った声を零す。





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