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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら



 朝一に来て正解だった。客の数は少ない。


 まず手始めに雑誌のコーナーへ向かい、女性雑誌を一冊手に取った。それから右よし、左よしと頷いた杏璃は官能小説のコーナーにて、何冊か目についた本を棚から抜き取る。


 卑猥な文字が連なる本は、雑誌で隠してカゴに入れた。ミッションワン成功である。


 次に向かったのは18禁と背表紙に刻まれる漫画のコーナー。杏璃にしてみたら未開の地だ。


 重たくなったカゴを握る手に力が入る。うっすらとその手に汗が滲む。


 しかし恥を忍んでここまで来たのだ。逃げるわけにいかないと自らを叱咤して、再度左右を見てから本棚の前に立った。


 サングラスの下の目が忙しなく動く。あまり過激ではないタイトルを選び、一冊抜き取ってみた。


「う……っ!?」


 ――なかなかにパンチのある表紙だった。


 裸同然の少女が大きく脚を開いて誘っている絵だ。それだけならまだしも、彼女の手にはピンク色の亀の頭に似た何かが握られ、脚のつけ根からも細い導線が伸びている。しかも下着から液体がこれでもかと白い脚に散っていた。


 ふぉぉぉぉ! と、心の中で叫ぶ杏璃。


 自宅なら心置きなく口から叫び声が上がっていた。





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