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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら



 しかしどうあれ別れた事実は変えられない。結婚を見越してきた彼女だったのに。


 仕事もプライベートも上手くいかない総一は、うだつが上がらない男。やはり彼に最も適している表現はこれである。


 そんな彼が心の安定を求めるのは、必然と言えよう。


 だが総一にはこれといった趣味もなければ得意なこともなく、運動もそこそこ不得意だ。スポーツで汗を掻いた翌日、筋肉痛で動けなくなるのは目に見えている。そしてまたそれが原因で、仕事でミスをするのも自明だった。


 総一は初めて思う。自分は何て空っぽなのだろうと。


 三十目前にして悟るあたり、彼の不出来なところなのだろうが、まずそこに気が付けていれば、このような人生を歩んではなかったろう。


 さて、総一の心の安定がどうなったかに話を戻そう。


 彼はペットを飼ってはどうだ、と考えたのだ。他力本願と言えば聞こえは悪いが、アニマルセラピーは立派な医療行為だ。少なくとも総一はそう考えた。


 彼が住んでいるアパートは家賃が安いながら運よくペット可だ。契約の際に飼う予定はなかったが、実家では犬猫を飼っていたし、いつか飼ってもいいようにとそうしたアパートを選んでいた。


 早速彼は近場のペットショップへと赴いた。






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