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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら




「猫が……七万円!? 犬は十五万円!?」


 ショーケースの中にいる愛くるしい犬猫たち。眺めているだけで癒される彼らの値段に、総一は一人悲鳴を上げた。


 総一の手取りは三十万円を切る。そこから家賃や光熱費、食費や実家への仕送りを差し引くと大枚ははたけない。


「犬や猫ってもっと安いと思ってた……」


 予想よりも値が張るペット代に、安定を得られぬまま帰路につく総一。


 その帰り道に路上でティッシュを配っている若い女の子からティッシュを受け取ると、裏に『貴方の求めるペットが格安で手に入ります』の文字が総一の目に飛び込んだ。


 まるで運命的な出会い――とは当然思わない。偶然にしても出来すぎている。おそらくは総一のように、ペットの値段にしり込みをした客狙いなのだろうが、ティッシュの広告には悪徳業者も多いと聞く。


 もし自分がそんな業者に捕まりでもしたら――と、総一は帰宅してすぐ挟んである広告だけゴミ箱に捨てて、ティッシュだけ活用することにした。


 そんな折にやらかした仕事での大きなミス。危うく契約が破綻になりかけ、上司からこってりと絞られた。


 担当から外され、後任には総一が面倒を見てきた後輩が就くことになった。当面の間、営業にも出してもらえないことになり、総一のうだつの上がらなさと精神的ショックに拍車がかかった。






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