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want to be ...【短編集】
第3章 甘い熱






広い背中に顔を埋め、すんすん、とにおいを嗅ぐ。


ベビーパウダーの香り。


落ち着くなぁ…









相当長い時間寝ていたらしく、目が醒めると部屋に明かりがついていて、窓の外は既に暗かった。


声が聞こえる方に顔を向けると、蒼汰が美咲さんと話していて。


「名前はもう決めてあんの」


「うん!あたしと大樹から1文字ずつとって、
2人に1文字ずつ入ってるの」


「…へっ、知ってるか?
自分の名前の一部子供につけたら、
生まれた子供、親より成長しないんだぜ?」


「…えぇっ!?そうなの!?
…、えぇー…、そうなのかぁ…」


「いいのか?お前らより成長しなくて」


「…、…う。あたしよりは絶対してほしいけど
大樹は凄いからなぁ…大樹以上になったら
びっくりするし、ちょっと心配になるかも」


「…そうだな、あれは特殊だな。
大樹以上なったら俺も心配だわ」


「でも今更変えないよー?
ずっと、決めた名前で呼んでお腹撫でてるもん」


…あぁ、ものすごく幸せそうな声。


実はあたしは知ってるんだよね、美咲さんの子供達の名前。


麻友も翔平も健も…潤お兄ちゃんですら知ってる。


どうして蒼汰だけに教えてないのかは、のちのち。


「へぇ。何て名前なの?」


「…むふ。教えない」


「あ…?この野郎…」


蒼汰、声が優しげだなぁ…


ゆっくり身体を起こすと、美咲さんが気付いてくれて立ち上がろうとする。


「あっ、杏奈ちゃん!おはよう、気分はどうーっ?」


「…あ、大丈夫です!
美咲さん、あたしは大丈夫なので立たな…」


「おい立つな美咲。杏奈の熱俺が計るから」


「…えぇ?大丈夫だよー。
よかったぁ杏奈ちゃん、顔色すっごくいいよ!」


「ありがとうございます!かなり楽になりました…」


そう言いながら身体を起こすと、蒼汰があたしの額に手を当てた。


「…ん、ぬるい。うん…大丈夫だろ。はい、杏奈完治」


「…え!?ちょっと!適当すぎでしょ!?
ちゃんと体温計で計って!」


「…じゃあこれで分かるんじゃね?」


「…っん!?」


突然後頭部を掴まれ、深く唇を塞がれる。


すぐに割り込んできた熱い舌が絡み、クラクラする…


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