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溺れる恋は藁をも掴む
第19章 こんな日は……
私はコーヒーショップの中に入る。

テーブルの席に目を向けると、
あの人が座っていた。
向かい合わせに座り、コーヒーを頼む。


「久しぶりだね」

「そうですね」

「華ちゃんの噂は聞いていた。
凄く変わったって」

「そんなに変わりましたか?」

「凄く、変わったと思う」

「少し、痩せただけです」

「そっか…
今日は時間作って貰って有難う」

「いいえ。
気になったから来ただけです」

寸前まですっぽかしてやろうとも思ったわ。

「たまたま、華ちゃんの会社のメンテナンスを頼まれてね。
沢口がずっと担当していたんだけど、
風邪で休んでいて、代わりに俺が来たんだ」

「そうでしたか」

頼んだコーヒーが運ばれてきて、
ブラックのまま一口飲んだ。

「華ちゃん、
華ちゃんを沢山傷つけたよね。
本当にごめんなさい。
ちゃんと謝ってなかった」

「もう、過去の事ですから」

「本当に今更だよね。
でも、華ちゃんを傷つけたままだったから」

「開き直りましたから、
ご心配なく」

つっけんどんな言い方になってしまうのは、
それだけ辛くて、やっと忘れられそうだった事をほじくり返されても腹が立つからだ。

「そのままじゃいけない気がした。
華ちゃんに謝罪の代わりに話そうと思った」

「何をですか?」


神妙な面持ちで私を見ながら、
誠治さんは話し始めた。
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