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溺れる恋は藁をも掴む
第19章 こんな日は……
誠治さんの話は続く。
私はただ黙って聞いていた。

「その頃から俺は人間不信気味になっていた。
祖母は俺を可愛がってくれたけど、
俺の母親は、『ふしだらな女』と言われて育ってきたんだ。
それに再婚した親父に、若い母親と美月。
美月の母親は、俺に優しくしてくれたけど、上手く馴染めなかった。

子供だったからさ、
大人の事情より、自分の気持ちがついてゆけなかったんだよね。
それでも、赤ん坊の美月が居てくれたお陰で、家族っていう空気は保てたんだ。
血は繋がってない妹だけど、可愛いって思ったよ。
美月が居てくれたお陰で、歪んだ気持ちも救われてゆくような気がした。
美月が居るだけであったかい気持ちにもなれたんだ。
可愛いって思った気持ちが、恋心に変わってしまった。
自分にも止められないほど、好きになった。
いけない事って分かっていても、
その気持ちを抑えられなくなっていた。
勿論、間違いを起こす気なんてない。
理性だってある。

でも……
このままじゃいけないって思ったから、
こっちに就職をして距離を持ったんだ。

華ちゃんと真剣に付き合おうと思った。
華ちゃんは自分の気持ちに真っ直ぐな人だから、それにあやかりたくもなった。
気持ちを華ちゃんに向けよう。
向けたいと思えば思うほど……ダメだった。
俺のエゴで、華ちゃんを傷つけてしまった。
自分を最低だと思う。
本当にごめんなさい。
こんな異常な男で申し訳ない」


誠治さんは、
悲しい目をして私に頭を下げる。

血の繋がってない妹さんをずっと好きだったのね。
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