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サイドストーリー4
第15章 キスマーク
はぁ?

「おい!」
目の前に行って不機嫌な声で話しかけると
「あ。遅かったね。ちょっと待ってて。柳下さんと話があるから」

なんて適当な返事をして柳下との話に戻った。
「おい!」
俺の話を聞けって!

「ちょっと待ってて」
「優衣!」

「しずか、ちょっと待ってて?この話が終わったら聞いてあげるから」

俺は大きく息を吐き出した。
店には俺たちの他にも多くの人がいて、これ以上言わないほうがいいと思い
あきらめて座ることにした。

カバンを端に置いて優衣の後ろで優衣を足の間に抱え込むように座った。
「しずか?」
「待ってるからどうぞ。話を続けて」
そう言って後ろから優衣を抱きしめた。

優衣の腕をさすり、首筋にキスをした。
「ちょ・・と。しずか」
「ん~?早く柳下と話せよ」

首筋に手を這わせ、服の襟をなぞった。
「加藤さん・・・」
どこを見ていいか分からないような表情で柳下が俺をいさめた。
「なに?早く優衣と話せよ。終わったら俺の番なんだから」
そう言って優衣の指先、1本1本にキスをする。

「しずか!ちょっと待ってて」
少しきつい言い方で身体を離された俺はムッとして

「分かったよ。悪かったなっ・・・」

と、それだけを言って
カバンを持って店を出た。

一瞬間をおいて優衣が店から慌てて出てきた。
「ちょっと待って。しずか、どうしたの?」
靴を履きかけのまま、息を荒くして俺に追いついた優衣を上から見つめて。
靴をきちんと履くために、
片手で俺のスーツを持ってバランスをとる優衣を思いっきり抱きしめた。
「しずか?」
「今日はいやなことがあった。俺が自信を持って進めていた仕事が仕切り直しになった」
「そっか」
「イライラしてた。ごめん」

抱きしめていた腕の力を緩めると
少し身体を離した優衣がそっと上を向いて俺を見つめる。

「バカね。口紅がスーツについちゃったじゃない」
「・・・・」
「さ。一緒に帰ろう。気づいてあげなくてごめんね」
そう言って、優衣は背伸びをして道端で俺にキスをした。

俺は―――結局こいつに敵わない。


END****

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