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サイドストーリー4
第20章 悠久の恋の果てに
「うん。それで?」
かあ様とヨシの目を盗んでみさをと二人であんみつを食べに来た。
これが僕の1番の至福の時だ。

「奥様の小紋の洗い張りをして頂くために、仕立て屋までお使いに行ったんですが
どうにも迷ってしまいまして」
「うん」
「おマサさんの書いて下すった地図を見たんですが・・・」
「うん?」

そこでみさをが言い淀んだ。
「曲がる場所などが字で説明してありまして・・・」
「あ・・・ぁ」

みさをは字が読めない。
マサは僕に贔屓されているみさををよく思っていなくて
事あるごとに意地悪をする。

「困っていたところを助けて下すった学生さんがいまして」
「それは良かった」
「お礼を言う時に名乗りましたら、坊ちゃまと同じ帝大の学生さんだと言うじゃありませんか。
やっぱり帝大ともなるとお優しい方ばかりなんですねぇ」

そう言って、お礼を言っておいてください。とみさをは上機嫌であんみつを食べた。
僕は、みさをを見ながら「これか」と思い当たった。

今日、大学である男にいやみを言われた。
「大久保男爵では字の読めない女中に字で説明した地図を渡すのか」と。
彼は苦労して奨学金で高校を卒業し、その才能を見込まれて
明石男爵の後ろ盾を受け大学に来ていた。

そんな苦労人の彼は、大久保の名前で金に苦労したこともない僕をどこか鼻で笑っていた。

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