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月の吐息
第1章 三日月

美月を見送ってから、スツールを回して立ち上がる。クレジットカードで支払い頼んで、深呼吸した。
ほどなくして戻ってきたウェイターから伝票をもらい、『高松 健二』とサインをする。
手が震えそうだ。やべーな。

「どうぞ」
「ども」

伝票を渡した俺の手に、ウェイターがウィンクしながら鍵を渡した。

運命の扉が開く鍵なら、いいんだけどな。





軽く首を回してからエレベータホールに向かった。






エレベータに乗り込んで、ウェイターから貰った鍵を、回数パネルの下の鍵穴に差し込む。
美月は、2人きりのせいか、酔いのせいか、この箱の中でも会話を止めない。

「ね。トイレも凄い綺麗だった。男女兼用なのに、あんなにシックでムードあるトイレなら、女子も常連になるよねー」

私は女子って年でも無いけどー、と笑う彼女は、俺が1階のボタンを押してないことも気づかなさそうだ。
酔うとガードが緩くなるのは、成人式の夜に知ったんだっけ。


エレベータが「チン」と涼し気な音を立てて止まる。


「え?」

「降りて、美月」


回数パネルは5階を指している。
空きテナントのような、そこは、上のBARと同じ広さを有し、やはりエレベータ降りて右側の壁が一面ガラス張りだ。
濡れたガラス越しに外のビルの灯りが差し込み、仄かに明るい。

先に降りて、明るい箱の中で戸惑ってる美月に手を差し出す。
美月の手を取ると、酔ってる彼女に配慮して、少しゆっくり歩いた。


「ここ5階? なんで、止まったの? 明らかに無人・・・っていうか、空きフロアみたいだけど」

「んー、ちょっとね」


窓際まで連れていく。

5階から見下ろす道路に、傘の花が色とりどりに咲いていた。


「ちょっと美月に伝えたいことがあってさ」

「うん」

「出張、行く前に伝えとこうと思って」


つとめてサラリと言うようにした。

美月が首を傾げる。その顔を、雨粒で乱反射した光が照らして、どこか幻想的だ。


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