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講義の終わりにロマンスを
第4章 決戦の金曜日


磨かれたタイルの壁に、白い洋式トイレ。洗面台も綺麗に拭かれて、雫一つ残っていない。
広い造りの、シックな空間に彼女を押し込む。
佐々木は常に、フロアに上がってきてから、一度、控室に入って着替える。
その隙に彼女を逃がせばバレることは無い。


(バレる? 俺、何考えて―――)


コンマ数秒、考えてから、真菜を見た。
鞄を抱きしめて、何が何だか分からない、という顔をしている。


「ちょっと隠れてて」


素早く告げてからネームプレートを押し付ける。

直後、上目遣いで自分を見る濡れた瞳を見た時、小鳥遊の体温が一度上がった。

何かが外れる音が聞こえた。


「ムードが無くて、ごめん」


早口で謝り、彼は徐ろに彼女を左手で壁に押し付けた。
黒いタイル張りの壁に背中をぶつけた彼女の顎を、小鳥遊の右手が捉えた。




触れるだけのキスが、真菜の唇に降り落ちた。



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