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兄の狂気
第3章 誘 惑







ただ啄むようなキスを繰り返し、
下唇を挟んだり、挟まれたり。


そして、ぺろっと唇を舐められたと思ったら、
唇の隙間からぬるりと舌が滑り込んできた。


壁に肘をついていた哲平くんの腕が、
あたしの身体に回る。


あたしも自然と、哲平くんの背中に
腕を回して服を掴んでいた。


静かな廊下にやけに響く、キスの水音。


それが更にあたしの中のなにかを熱くさせて…


もっと、とせがむように哲平くんの
服をぎゅっと引っ張った。


遠くで聞こえる雨の声。


薄暗い中あたし達は、夢中で舌を絡め合っていた。














雨が降りしきる中、傘もささず、
哲平くんと手を繋いで帰り道を歩く。


ゆっくり、ゆっくりと。


空から落ちてくる雨があたし達を濡らし、
体温を奪おうとするけど、あたしの身体は
ずっと火照ったままだった。


顔が、熱い。


繋いでる手が、触れてる腕が、熱いよ…


哲平くんの家を素通りし、あたしの家に向かう。


あたしの家が近くなり何となく哲平くんを見上げた。


あたしの視線に気付いた哲平くんが
あたしを優しい目で見下ろす。


迷いは、なかった。


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