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兄の狂気
第4章 交 差







「はい。あの…こ、これで、拭いて」


差し出された、真っ白なバスタオル。


「…ありがとう、ございます」


受け取って、顔に押し付けた。


広げて頭にかけた俺を上目遣いで見つめる瞳さん。


…ちょ。何その目…可愛すぎですから。


自分がどんなそそる表情してるか
自覚あんのかな、この人。


…ある訳ないよね、うん。


何となく視線を逸らして、わしゃわしゃと
髪を拭いて…ふと、瞳さんを見ると。


「っ…」


…何つー顔、してんですか。


信じられないくらい、”女”の顔をしていた。


ねぇ、今何を考えてるんですか?


どういう感情で俺を引き止めて、
家に入れてくれたんですか?


俺は、あなたのことが好きなんですよ?


俺は…男、なんですよ?


家に入れて貰って、
…お風呂貸してくれようとして?


その後はいさようなら、って帰るほど、
俺の心は寛大じゃないですよ?


意味もなく見つめ合って、
瞳さんが小さく口を開いた。


…その時。


家の奥で聞こえる、お風呂が沸いたことを
知らせるメロディー。


弾かれたように走っていった瞳さん。


やがて、戻ってきた瞳さんは
俺の手を引いて中に入り、お風呂場に押し入れた。


「…はい。温まって、ね」


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