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夢想姫の逃避録
第10章 崩れ去る幸せな日々

あれからまた月日は流れて、桜の季節がやってきた。

緋奈はカレンダーに目を向ける。
あと1日で5月3日だ……。

忘れっぽい緋奈でもこの日だけはちゃんと覚えていた。

1年前、大好きな人と決めた大切な記念日。

緋奈とユウガの2人の誕生日。

嗚呼、ユウガが連れ去ってくれたあの日から1年がとうに過ぎているんだ。
それが何より嬉しかった。

「もうすぐだね…?」
後ろからユウガが抱きついてくる。
ギュッと強めのハグ。
嬉しそうな声だった。

「うん!なに作ろうかな……」
「ん?」
「料理……ユウガの好きなもの作りたいなって……」
しばらくユウガが考え込む。

「そうだなあ……カレーが食べたい!」
「カレー⁉︎ それなんだか普通の日に食べるものじゃない?(笑)」
「でも俺は緋奈の作るカレーが大好きだよ?緋奈の作ったカレー食べたいなあ……」
肩ズンされる。
口角を上げて目を閉じて幸せそうなその表情は、少しだけお茶目な子供っぽさもあった。

「じゃあ……カレー作るね!でもいつものだとつまんないからちょっといつもと違った感じにしようかな〜♪」
「なに?どんな感じ?」
「秘密ー!(笑)」
「なんだよ〜(笑)」
「あ、せっかくだから夕方、テーブル出してバルコニーで食べよ!ディナーみたいな!風が気持ちいいだろうし、雰囲気いつもと違っていいかも!」
「お?いいじゃん♪それで決まり!」

ユウガといろんなことを話し合って決めた。
お互い嬉しそうな顔をしている。
幸せだった。
ずっとこんな日々が続けばいいって思ってた。

でもまさかあんなことが起こるとは思ってもみなかった。
最悪のシナリオ。
こんなにも早く、突然に別れが来るなんて……考えてもみなかった。
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