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第10章 崩れ去る幸せな日々

叫んだ瞬間、強い力で緋奈は跳ね飛ばされた。

父親に掴まれていた力以上の反発がそこにあって、すぐに父親たちは逆方向に吹き飛ばされた。

緋奈は気付いたら大好きな人の腕の中にいた。
少しばかり身体の所々が痛かった。
でも抱きとめられたおかげで大きな怪我は無かった。

顔を上げると、ユウガが刺すような目で親達を睨みつけていた。
緋奈を抱きしめる力が強くなった。

「ユウガぁ……」
安心感で涙が溢れた。
ユウガは緋奈を抱きしめたまますぐにいつもの優しい眼差しを向けてくれた。

「遅くなってごめんな……怪我は無い？」
ゆっくり優しい口調で聞いてきた。
心配そうに緋奈を見つめる。

緋奈は肩を震わせて泣きながら頷いた。

「良かった……怪我が無くて良かった……怖い思いさせてごめんな……こんなに震えて……」
ユウガは今にも泣きそうな声で緋奈をさらにきつく抱きしめた。
緋奈もユウガに抱きつく力を強めた。
離れたく無い……。

「いってええ……おい！みんな大丈夫か!? 」

父親の大嫌いながなり声が空に響き渡った。
その声に反応して緋奈はユウガの腕の中でビクついた。
心臓が壊れそうな程の勢いでバクバク鼓動を早めている。

「大丈夫だからな……すぐ追い出してやるから……」
「おい、お前の正体はわかっておる。その娘さんを早く解放しなさい」
仙人のようなお坊さんが落ち着いたトーンでユウガにそう言った。

「緋奈は誰にも渡さねえよ。こんなに緋奈が脅えてるっていうのに……お前らの元なんかに返すわけねえだろ？さっさとここから出て行け‼ 」
「お前の正体は……」
「うるせえ‼ ここから出てけ!! 失せろ!!」
ユウガが叫んだ。
脅えて動け無い緋奈を強く抱きしめたまま手をかざして、黒い炎を仙人のようなお坊さんに向けて勢いよく放った。