この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
曖昧なままに
第12章 波乱の再会
「だから、レジ前で洋人さんを見た時……私は嬉しかった。でも、それ以上にとても……怖くなって。それで――」

 彼女は俺の前から、逃げ出そうとしている。だが、どうして――。

「俺が――怖い?」

 愛美は髪を揺らし、首を横に振った。

「さっき、私に話してくれてる時に思いました。洋人さんは、優しい人……いえ、そんなこと、ずっと前から知っていた。知っているから……怖い。もう、洋人さんを私の過去に、巻き込むのは止めようって……そう決めていたから」

「それは、俺に彼女ができたって、聞いた……から?」

 自分でそう口にしながら、ズキッと胸が痛む。俺に優しいだなんて、言ってもらえる資格などありもしない。

 しかし愛美は、そんな俺の問いにも淡々と答えた。

「そうではありません。いえ、正直に言えば少しショックでしたが……あの日の前『話がある』というメールを見て、ある程度の予想はしていました」

「ごめん……」

「別に洋人さんが、気に病む必要はありません。私は自分の勝手な都合で、洋人さんを利用していたんです。けれど、それもできなくなる。そう感じていた私にとって、あの日が想いを遂げる、最後のチャンスでした」

 想いを遂げる。それはやはり、彼女が頑なに守っていた、最後の一線のこと……?

「でも、洋人さんは直前で引き返した。それで私も、もう止めようって……そう思っていたのに」

 俺はそれを聞き、何だか自分が恥ずかしくなった。

「引き返した――なんて言わないでくれ。あれは俺に『覚悟』がなかっただけ。だから、俺は……」

 その時の委縮した自分を思い出し、情けない想いに苛まれるが――。

「それも違います。あの時――私が『愛菜』となったのは、きっと私自身では無理だと知っていたからなんです。仮の人格でそのまま、乗り越えようとしていた。でも結局は、洋人さんに『覚悟』を強く迫ったりして……。初めから覚悟がなかったのは、私の方なのに……」

 彼女の言葉から伝わるのは、その奥底の如何ともし難い哀しみだけ。何故、男と交わることに、それ程の抵抗が生じているのか。

 それを知るには、どうしても訊かねばなるまい。

「話してくれないか。愛美の過去に、何があったのかを」

 但しそれを聞く以上、俺には……。

「……わかりました」

 その時――愛美はついに、その過去を明かそうとしていた。
/177ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ