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曖昧なままに
第14章 月並みな俺
 俺は愛美との出会いから、順を追って正直に話して聞かせる。口にし難いこともあったが、もう包み隠すつもりはなかった。愚かで情けなく思われようとも、本当の自分を知ってもらいたいと願う。

 それは独り善がりな想いで、あったのかもしれない。奈央にしてみれば、聞かずに済ませたい話には違いない筈。それなのに一切その口を挟むことなく、俺の話に静かに耳を傾けてくれていた。

 全てを聞いた後――。

「ちょっと……時間を頂戴。今、頭の中を整理してるから……」

 奈央はそう言うと額に手を置いて、目を瞑るとじっと思慮していた。そして暫くの時を空けて、再び瞳を開くと俺を見据える。

「中崎さん」

「はい……」

「百歩譲って――その娘の過去も含め、その話を私が信じるとして――」

「うん……」

「千歩譲って――その娘に色々と……気持ち良くしてもらってたことも、私が許すとしようか――」

 そう話す途中で、堪えるようにぐっと眉根を寄せる奈央。

「でもね。私が譲れるのは、そこまでだよ。それも結果として、貴方が私を選んでいるってこと――そう私が納得させることができて初めて。それが、最低限の条件」

「それは――」

「納得させられるの? もう一度、その娘に会おうとしている、中崎さんが――」

「……」

 はっきり言って言葉もない。どう考えても奈央の方が、正論だった。そして俺に許しを乞う、余地さえ残してくれている。

 その上でそれでも、俺が我を通すつもりなら……。その結果は最早、明確に思えた。

 黙っている俺を横目に、奈央はふっと大きくため息をつく。

「その娘の身の上には、私だって同情する。でも、敢えて言うよ――そんなの、ほっておけばいい」

「奈央……」

「別に薄情だって、思ってくれていいよ。だけど私だって、そんなお人好しじゃないの。自分の好きな男に、他の女なんか思いやってほしくないから。それに――」

「――?」

「貴方が抱けば、その娘が立ち直るなんて――そんな保証が、何処にあると言うの? それは中崎さんの、思い込み――ううん、自惚れなんじゃない」

「そうなのかも、知れない……。だけど俺は……ここで見過ごしてしまえば、この先も彼女のことを引き摺ってしまう。そんな状態で奈央と、一緒に居る自分が嫌なんだ……」

「は……話にならない」

 奈央の顔に浮かぶ――失望。
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