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曖昧なままに
第15章 唯、興じて
 俺は自身をその奥まで、差し切った。

「あ――――!」

 その瞬間、愛美は大きく身体を仰け反らせる。


「ツッ……」

 愛美の中は、その潤いからは想像できぬ程にきつい。何とか埋め込みつつも、俺は思わず苦悶の声を洩らす。

 少女だった頃からの時を経て、ようやく男を迎えし――場所。

 その間の想いの深さを物語るように、愛美は俺を強く強く圧迫し続けていた。

「ま……愛美」

 明らかに快感の域を逸脱し、このままでは動くことさえ儘ならない。苦痛さえ覚えながら、俺は許しを乞うように、その名を口にする。

 だが愛美は顎を天井に向けたまま、ピクリともせずにその表情を見せようとしない。

「だ……大丈夫か? オイ、愛美!」

 呼びかけ身体を揺すっても、まるで無反応な愛美。

 やはり愛美にとって――只事ではなかったのか?

 苛む大きな不安に俺は一旦、自身を引き抜こうと試みるが――。


 ギィ――ギュ、ギュウッ――!


「うっ、ぐっ――!」


 後退しようとする程に、彼女の肉壁はその壺を容赦なく狭めてゆく――。

 そんな中――


 ピカ――――ズズゥン!


 愛美の異変に呼応するかの如く、ざわめいたのは――天。

 眩い輝きに遅れること僅か。接近した落雷が、大きな響きと振動を伝えた。

「う……」

 慄き唖然として、俺は窓の外を窺い見る。

 するとその時、その頬にそっと触れた掌。

 その感覚に視線を戻すと、そこには俺をじっと見つめている愛美が……。

「愛美――?」

 しかし、顔が怪しく微笑むと――。

 俺を一心に眺めながら――その口が囁く名は――。


「柴崎……さん?」


「え……!?」


 俺は暫しの絶句を、余儀なくされていた――。

 その顔を優しく手で撫でながら、愛美の瞳から止めどなく流れ出したのは――涙。

 濡れゆく瞳で、愛しい人を映し取ると――

 満足げで虚ろな顔で、その募る想いを告げる。


「ずっと、探してたんだよ。愛美の中に、居たんだね。柴崎さん――」


 それは、愛しさの表裏か。

 その唇は次に、残酷な囁きを奏でた。


「愛美――もう、逃がさないから。このまま一緒に――ずっと一緒に」


 その言葉を体現するかのように――


 ギュウィッ――!


 呑み込まんばかりの締め付けが、俺を襲った。
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