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曖昧なままに
第16章 エピローグ
そして、もう一人――。
「美央は……お昼寝かな」
俺は奈央が押している、ベビーカーを覗き込む。
「うん。気持ちいい陽気だから、ぐっすりだよ」
俺と奈央は――すやすやと心地よく眠っている、美央の顔をしばらく眺めていた。
俺たち二人の長女――中崎美央は、現在生後三か月余りになる。俺たちが引っ越しを決めたのも、彼女の誕生が一番の理由だった。
ちなみに名前に『美』の文字を用いたのは、奈央が希望してのことである。そこに奈央から一字取って、最終的には俺が名付けたのだが……。俺に他意がなかったことだけは、一応は断っておきたい。
「ここ――いい公園だね」
「ああ、ホントだ」
そんな会話を交わしながら、俺たち三人は公園の中の一回りを散歩して行く。爽やかな風が木々を揺らして、穏やかな時間を共に過ごしていた。
そうしていると、俺はふとこんな風に考える。恐らくこの先はもう、俺は迷う必要などないのだろう、と。奈央と美央――二人の笑顔の為。
俺には何物にも代え難い、大きな目的と希望を得ているのだから。
ゆったりと歩を進めて、俺たちは公園の一番奥の方へと回り込んで行く。その場所には小さな子供が遊ぶような、滑り台やブランコ等の遊具が備えられていた。
そこで遊んでいる幼児の姿を見つけ、俺たちはふと足を止める。
「もう少し大きくなったらさ。美央ちゃんも、ここで一緒に遊ぼうねー」
奈央は眠っている美央に向け、そう優しく語りかけていた。
そんな時のこと――。
「洋人――ダメ!」