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曖昧なままに
第7章 ディープな日
 それから一か月程が経過し、暦も二月へと遷っている。

 本気を出した冬の寒気が、痩せた俺の身体にも容赦なく吹き荒む。只でさえ恒常的に、心の寒さに苛まれている俺。その相乗的な冷えを痛感する頃は、最も憂鬱な季節だった。

 だが今年は例年とは、確実に異なる点がある。俺の内面に於いて、それは大きな変化を齎していた。当然ながら、それは愛美という存在。

 愛美は週に一度は必ず、俺の部屋を訪れるようになっていた。

 夜にかけて雪が積もり始めている、この日。仕事を終えアパートに帰った俺は、ドアの前に立つその姿に驚く。

 スーパーのレジ袋を手に、そこに立ち竦んでいた愛美。ニット帽やコートの肩に積もる雪が、そうしていた時間が短くないことを俺に教えていた。

「来るのなら、連絡してくれればいいのに」

 俺はそう言いながら、彼女の身体の雪を手で払う。いつもならメールをして、俺が居ることを確認してから来るのが通例だ。

「こ、こうして待ってみるのも、いいかと……ふと思ったんです。携帯は便利なものだけど……こんな風にじっと人を待ったり、時にはすれ違ったり……そんな文化を、取り上げているのかもしれませんから」

 寒かったのだろう。そう喋りながら、愛美はその唇を振るわせていた。

「とにかく、早く中へ――」

「はい」

 俺は冷えた身体を抱き寄せ、部屋の中に入る。寒々とした部屋にストーブを焚くと、暫し愛美に暖を取らせた。

 そうして部屋も身体も暖ままると、愛美はキッチンに立ち料理を始める。彼女が持ってきたレジ袋の中身は、その為の食材だった。

 こんな風に愛美が料理を作ってくれるのは、これで三度目。しかしその手際は、普段料理などしない俺から見ても、かなりぎこちないもの。

 約一時間の苦闘の末、些か申し訳なさそうに愛美が告げる。

「あの、一応……出来ました」

「ありがとう。じゃあ、食べようか」

 テーブルに並んだメニューは二品。随所にルーが溶け残っている、カレーライス。武骨に切り刻まれた野菜に、多量のドレッシングを注いだサラダ。

「すいません。不味いですよね……コレ?」

「そんなことないよ」

 俺がそう言って笑ったのは、別に無理をしてみせた訳ではなかった。外食やコンビニ弁当に飽きた俺に、その不慣れな手料理はとても新鮮な味を与えてくれていた。
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