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Dolls…
第15章 その愛、凶器につき
だけど、不思議なことにいつもより怖くない。

それどころか、いつもより椎葉さんの目が悲しげに見えた。


だって、椎葉さんは私の大事な幼馴染みを逃がしてくれた。

私にも逃げるチャンスをくれた。


「お前は俺の━━━━━」

「………っ」


壁に追いやった私の体をギュッと抱き寄せた椎葉さんの腕が、小さく震えていた。

らしくもなく、椎葉さんの声まで震えてる。



椎葉さん、何を言おうとしたの?

"俺の…"何…?

私は椎葉さんの何?


だけど、もうそんな事はどうでもよかった。


自分自身の気持ちすらわからない私が椎葉さんの気持ちを読み解くなんて出来るはずがない。

私を抱き締めながら震える椎葉さんの気持ちなんて私にはわからない。




ただ…、今私を抱き締めてる椎葉さんの腕が全てだ。

まるで小鳥のように震えてる、椎葉さんの腕だけが真実。




「椎葉さん、らしくないですね…」

いつもなら逃げ場を無くしたかと思えば私をベッドに押し倒して好き勝手に弄ぶ癖に。

なのに、今は震えながら私を抱き締めてる。

玩具を取られまいと必死になってる子供みたいだ。


すると、椎葉さんはいきなり私の体を引き離し肩を掴んだ。

椎葉さんの方へと向き直された私は…


「いいか。お前は俺のモノだ。誰にも渡さない。何処にも行くな…」

「あ…」


私に言い聞かせるように椎葉さんは真剣な目と口調で私にそう告げた。

告げると言うよりかは、言い聞かせるように。


その目は、真剣そのもので、気迫さえ感じるほど。





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