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Dolls…
第16章 誘惑の果て
それは、半分小走りに近い足取りだった。

いつかの奈々さんの時みたいに気配を隠しながらゆっくりと近付いた訳じゃない。

足音だってちゃんと聞こえてるほど。

椎葉さんに気づかれたらまた盗み見だとか盗み聞きだとか言われちゃうかもだけど。






物々しい雰囲気に引かれて玄関ホールの方へと向かった。

奈々さんの時みたいに階段の上から玄関ホールを眺めて見る。

隠れるつもりもないほどに身を乗り出して何があったのかを確認するために。




手刷りに捕まり玄関ホールを見下ろすと、そこには




「ここはお前の来るところじゃないんだっ!」

怒鳴り散らす椎葉さんと

「何だよ、それ。冷てぇやつ」

その傍らに立つ見知らぬ男性。





あの人は、誰…?






ポカンとしながら2人の様子を眺めた。

椎葉さんは私に背中を向けて、その椎葉さんに向かい合うようにその男性は立っている。

「タクシー呼んでやるからそれに乗ってさっさと…」

「せっかくここまで来たんだから泊めてくれてもいいんじゃね?部屋なら余ってんだろ?」

椎葉さんの怒鳴り声に臆することなく余裕と言った表情を見せる男性。


椎葉さんはあの男性に冷たく当たってるけど、会話が内容からして顔見知りとかではなさそうだ。

もっと…、古い付き合いの人っぽいけど。


ここから見えるその男性は、茶髪の髪にジーンズとTシャツのラフなスタイル。

椎葉さんとは対称的な雰囲気の人。

怒る椎葉さんに向かって口答えをするわけでもなく、上手く交わしながら受け答えをしてる。

椎葉さんの事ならお見通しと言った所だ。


あの人は、一体…。







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