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Dolls…
第16章 誘惑の果て
「ふざけてねぇよ。大真面目だ」


椎葉さんの作業部屋にあったあの写真の女性も気になる。

椎葉さんと奈々さんの関係も気になる。

椎葉さんの口から聞きたいけど、多分私は何も信じられないだろう。


「尚人、お前をここに泊める事は出来ない。さっさと家に…」





あ…っ。






「━━━━い、いいんじゃないですか?一晩、ぐらい…」



椎葉さんの横から割って入るように、声が無意識に発せられた。

その声は震えながらも安藤さんの耳にも届いただろう。


「…は?」

「マジ?ほら、椿ちゃんもこう言ってくれてんじゃん!」


椎葉さんの顔が一層険しくなった。


それもそのはずだ。

この屋敷の主人でもない私が椎葉さんの声を押し退けてこんな出来すぎた事を言ってしまったのだから。

だけど、そんな私達を無視して安藤さんは嬉しそうに笑ってる。


「椿、お前どういうつもりで…っ」

椎葉さんの怒りは最もだ。

私だって、何て出過ぎた真似をしたのかと自分でも驚いている。

ただの居候の私がこんなでしゃばった真似を…。





それでも、私は知りたかった。

「だって…、山の天気は変わりやすいって言いますし、もしこの間みたいな嵐にでもなったら…」


椎葉さんと幼馴染みの安藤さんなら椎葉さんの事を沢山知ってるはずだ。

「椎葉さん、普段から天気予報なんてチェックしないでしょ?どうなるかわかりませんよ」


私の知らない椎葉さんを知りたい。

私の知らない、椎葉さんの本当の顔を知りたい。






「よしっ!それじゃあ決まり!俺の部屋は適当に決めてくれていいから」

「ったく…」

私の言葉が後押しになったのか椎葉さんの表情は晴れないが泣く泣く承諾した、と言った所だ。

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