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Dolls…
第16章 誘惑の果て
「んな怒んなよ、秋人!俺の部屋は椿ちゃんと別々でいいから」

「当たり前だ…っ」



…よかった。

不機嫌になりながらも椎葉さんの許可は下りた。



椎葉さんの幼馴染みと言っても椎葉さんの全てを知ってる訳じゃないかも知れない。

この人に聞いたからと言って椎葉さんの全てを知り得るかと言われれば何とも言えない。

幼馴染みの椎葉さんの事を居候である私に話してくれるかどうかもわからない。

本当のところ、何の根拠もない。

何だか、途方もない賭けに出たような気分だった。



「…部屋になら私が案内します」

「え…?」



だけどこの人なら、私の知らない椎葉さんを知ってるはずだ。

少しでもいいから、知りたかった。

椎葉 秋人という人物を…。




「いや、俺が案内する。お前は…」

「椎葉さん。今日は人形を受け取る業者さんが来る日じゃないんですか?」

「……あ」


さっき書斎で椎葉さんが言ってた。

"もうすぐ業者が来る"って。



今ここには私と椎葉さんと安藤さんしかいないが、そのうち業者さんが人形を受け取りにこの屋敷にやって来る。

恐らく、もうすぐ…。




「人形を受け渡して、積もる話もあるでしょうから…、安藤さんは私が案内します」

椎葉さんが一緒じゃこの人に何も聞けない。

この人と2人になるチャンスを作ろうと思ったのだ。


「椿ちゃんがこう言ってくれてるんだし、秋人は仕事に専念してろよ」

「てめぇは黙ってろ」

少し考えたような表情を見せた椎葉さん。

やはり、商品である人形の受け渡しの時間に遅れる訳にはいかないのだろう。

それが椎葉さんの仕事なのだから。










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