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Dolls…
第19章 泣きながら、あなたを…
「私は…、椎葉さんの事なんか…っ」


椎葉さんの事なんか…?

だったら何で奈々さんに嫉妬したの?劣等感を感じたの?

どうして椎葉さんの事が頭から離れないの?

忘れる暇もないくらい頭と心に椎葉さんが住み着いてるの?

どうして椎葉さんを求め、渇望し、首に腕を絡ませたの?



どうして…っ!?



「椿ちゃんっ!」



━━━━━「あ…っ」

頭の中でいろんな考えや声がぐるぐる回って、現実逃避のような状態に陥ってしまったが

私の名前を呼ぶ安藤さんの声でハッと我に返った。

「大丈夫…?」

「あ…、だ、大丈夫…」


大丈夫なはずがない。

封印が解かれたかのように必死に抑え込んでた自分の気持ちが一気に溢れ出て来たようなものだ。

だって…、ずっと見ない振りをしてきたから。

まさか?ひょっとして?と思いながらも、この気持ちに名前なんて付けずに放っておいたから。

そのうち消えるだろう…と。

だけど、自分の中で芽生えたこの気持ちは消えるどころかどんどん大きくなって

最早見て見ぬふりすら出来なくなってきた。

第三者の安藤さんにバレるほどに。



「やっぱり…、そうなの…?」

「あ…、私…、わからないんです…。気づいたらいつもドキドキして、体が熱くなって…、自分から椎葉さんを…」

張り詰めていた糸が切れたかのように私の頬を涙が伝った。

ここまで来ても私自身はまだこの気持ちを認めようとはしなかった。

私ってこんなに強情だったのかな…?

「あんな人、だ、大嫌いなのに…っ、ひっ…、私の事好き勝手にも、弄ぶ癖に…ぐすっ。何で…」


自分の気持ちに戸惑うばかりだ。

どうしようもない事態だからこそどうしようもなくて涙が溢れる。




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