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第19章 泣きながら、あなたを…

安藤さんが言ったその台詞は…、私の胸を突き刺すどころか、深く、内部を抉られたような気分だった。

……椎葉さんを好きになってはいけない。

安藤さんは確かにそう言った。


「憧れるぐらいなら俺も止めたりはしなかった。だけど、椿ちゃん…、秋人の事が本気で…」

「や…、やだ、安藤さん…っ。何ですかそのジョーク…。あは、あはは…っ」

「ジョーク…？」

「ジョ、ジョークにしてはイマイチって言うか…、意味がわからないですよ…っ」

真剣な眼差しの安藤さんに反し私は必死に笑顔を取り繕う。

安藤さんの言葉や心に産まれた不安を振り払うかのように。



…安藤さんが変な事を言い出すから。



「あの、椿ちゃん…っ」

「もしかして、私に椎葉さんを取られるのが嫌だとか？意外に嫉妬深いんですね…」

安藤さんの言葉を遮るように安藤さんから目を反らしながら言葉を防いだ。



…だって、意味がわからない。

椎葉さんを好きになってはいけないって、何それ？

意味がわからない。

だけど、その理由を聞くのが怖い。

本来なら理由を訊ねるところだが、理由を聞くのが怖くて

続きを語ろうとする安藤さんの言葉を遮るように、壊れた蓄音機のように私はただただ話続けた。

でも、私の体は素直に反応してる。

体は震え、嫌な汗が額に滲み、目線は泳いで動揺しまくってる。



「椿ちゃん…」

「もう…、安藤さんってギャグとか言う人だったんですね…。い、意外かも…」


尚も1人でペラペラと話し続けた。

だって、その理由は聞いてはいけない気がしたから。



椎葉さんのお母さんの事と言い、自分の気持ちといい、ここから先は私は踏み込んじゃいけない、そんな気がしてる。

私の中の警告音がけたたましく鳴り響いてる。