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Dolls…
第19章 泣きながら、あなたを…


「……悪かったな」

「え…?」


後方から聞こえた椎葉さんの声。

それは、意表をついての謝罪の言葉だ。

悪かった…って。

「何が、ですか?」

「この怪我は俺のせいでもある。激しくし過ぎた」

…まぁ、確かに椎葉さんが激しく動いたから床で擦り剥いたようなもんだけど。

いきなり謝られてしまって思わず言葉を失ってしまった。

「別に…、背中ぐらい…」

確かにヒリヒリと痛んではいるし出血もしてるみたいだけど、そんな大袈裟な怪我じゃない。

こうやって薬も塗ってくれてるし痕にはならないだろう。

それに、顔に怪我をしたわけでもないし…。

「私の体なんて…」

そんな綺麗な体でもないし、誰に見せるわけでもない。

「お前はまだそんな事を言ってるのか?」

「え?」

「お前がこの屋敷に来た当初、俺がお前に言った台詞、覚えてるか?」


私がここに来た当初、椎葉さんが言った台詞…。

その言葉に胸が一層激しく高鳴った。

いろんな出来事に遭遇して記憶の片隅に追いやられた椎葉さんの台詞。

頭の中の記憶を巻き戻さなくても、すぐに思い出せたその言葉。





「お前は綺麗だ」










記憶の中の椎葉さんの声と今の椎葉さんの声が重なって聞こえた。










「あ…っ」

「こんな綺麗な体に傷が残ったら勿体ないだろ?」











ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ…












椎葉さん…。



握っていた布団を更にギュッと握り締めた。

安藤さんの忠告なんて既に頭の中にはなかった。

いつもそうだ。

椎葉さんは私の頭の中を引っ掻き回して真っ白にして行く。

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