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Dolls…
第20章 別れの背中
「それに、あの人は━━━━━」

と、再び椎葉さんの悪口を口にしようとした時だ。




「もういいよ、椿ちゃん」

「え…?」

安藤さんの声が私の話を遮った。

その声に私のお喋りも、食事をする手も止まった。




「な、何がですか…?」

「もういいよ。それ以上無理しなくて」

安藤さんの目が私を見つめてる。

頬杖を止めて、お好み焼きを食べる私を一点に見つめている。

その目は…、椎葉さんとは正反対の優しい目付き。

その瞳に見つめられただけで、堪えてた想いが一気に溢れ出しそうになる。


「別に…、む、無理なんて…」


嘘だ。

本当はさっきから必死に我慢してる。

少しでも油断したらまた涙が溢れ出しそうだから。

安藤さんは私の空元気などとっくに見抜いてる。

これ以上の痩せ我慢は無意味だけど…、でも…。


「俺の前では無理しなくていい」

「だから、私は…」



安藤さんは、全てを見抜いてる。

見抜いた上でこうして傍に付いててくれてる。

堪えてる涙や哀しみ、私の想いも全て…

言葉にしなくても安藤さんは…っ。


「…っ。う…」


……安藤さんのバカ。

わかってくれてるなら、騙されてくれたっていいじゃない。

空元気だけど、そんな私の嘘に付き合ってくれてもいいじゃない。

何でいつもそうやって優しくしてくれるの?

椎葉さんに酷いことを言われて傷ついた私の心をどうしていつもそうやって…っ。






「ひっ、う…っ、うわぁぁぁぁんっ!!」







堪えてた涙がまるで洪水のように溢れ出した。

椎葉さんに拒絶され突き放された辛さが頭の中に蘇り今にも私の心を握り潰してしまいそうだった。

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