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Dolls…
第5章 静かな晩餐
すると、ドアを開けて出て行こうとする椎葉さんがこちらを振り向き、またいつものように━━━━━


「病人に変な真似しねぇよ。普通の料理だ」


…………………っ!




本当なら、椎葉さんの作る料理なんて何が入ってるかわからないだけに食べたくない。

消化のいい料理とか何とか言って毒物でも入れそうだけど

去り際に見せた椎葉さんの笑顔が…


いつもの皮肉たっぷりの嫌味な笑いじゃなく、照れ隠しをするような柔らかい笑みに、思わず見とれてしまった。


「じゃぁな。安静にしてろよ」


そう言い残し、椎葉さんは部屋を出て行ってしまった。





残された私の胸は尚も高鳴り続けている。





な、何で…

何でこんなに痛いくらいに胸がドキドキしてるの…?

仏頂面が微笑んだだけじゃないっ!





椎葉さんの事がわからなくなってしまったからだ。

酷いことをしたと思えば優しくしたり

皮肉交じりの微笑を見せたかと思えば、無防備な笑顔を見せたり…。

今だって弱ってる私には指1本も触れずに…。


「痛い…」


枕に顔を埋めながら胸の高鳴りを必死にごまかそうとした。

風邪が治ればまたいつもみたいに酷いことをされるに違いない。


熱で魘されてるせいであの人の事が少し、少しだけ優しく見えてるだけだ。

風邪が治れば、私も気持ちも元に戻る…。

私は、あんな男…、大嫌いだ。



胸の高鳴りも、火照る体も

全ては風邪のせい。

次、目覚めたときは、きっと元に戻ってるはずだ。




















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