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Dolls…
第6章 甘い嫉妬
あの人の事を思い出しただけで、体にこもった熱が暴れるかのように心臓の鼓動を早くする。

誤作動で壊れてしまいそうなぐらいドクドクと高鳴る。

何で…?

何で、あんな最低な男に、私は…っ。


逃げるつもりで部屋から抜け出し、こんな広い屋敷の中を迷子になりながらも駆け回ったのに

ここまで来て、あの男の残像が頭にちらついて足が動かなくなった。

それどころか風邪がぶり返したかのように体が熱くなって、目眩さえする。

動けないまま、階段で座り込んでいると




「━━━━ねぇ、……秋人━━━━━」





え……?

今、何か聞こえた…?

熱のせいで幻聴まで聞こえだしたの…?

しかし、よく耳を澄ませて見ると





「お願いよ━━━━━ねぇ、秋人っ……」



確かに、何処からか聞こえる、女性の声。

秋人って、椎葉さんの名前だよね?

この屋敷には椎葉さんが1人で住んでるって言ってなかった…?




「うっ…」

体に鞭を打つように立ち上がり、その声の聞こえる方へと足を進ませた。

…誰かいるの?

椎葉さんの名前が聞こえたけど、この声の先に椎葉さんもいるのだろうか?



「だって━━━私……っ」

「だから……俺は━━━━…っ!!」



女性の声と交じって椎葉さんの声も聞こえる。

やっぱり椎葉さんも一緒にいるんだ。

この声の女性は誰だろう?

聞いてる限り、随分荒々しい口調だけど…っ。




微かな声に耳を澄ませ声のする方へと進んでいった。

すると、徐々にだがその声がハッキリとクリアに聞こえるようになった。




「あ…」

辿り着いたそこは、広い廊下からこの屋敷の玄関を一望出来る踊り場だった。

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