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新月
第1章 チヨ
「チヨ、ごめんなさい。」


いいの——。

かかさまが今までちゃんと、チヨのそばにいてくれたから。



やっと10歳になったチヨは、

目にたくさんの涙を溜めながら、けっして漏らさないよう、

母の最後は笑顔でいようと、心に決めていた。



チヨと母は二人暮らし。
父親はずいぶん前に若い女と何処かへいってしまった。


でもチヨは寂しくなんかなかった。

かかさまがいつでも優しく、暖かく、チヨを包んでくれていたから。


しかし、その母も今や、虫の息だ。
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