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新月
第1章 チヨ
「旦那様。申し訳ありません。

今までとてもお世話になりました。

どうか、どうか、


チヨをお願いいたします。」


弱々しい声で、切なる願いを紡ぎ出し、目から涙が溢れ出す。


「チヨ、チヨ……」



「かかさまっっ!!」



布団から微かにでてきた細い掌を、チヨはぎゅっと握りしめた。


段々とチヨを握る力が少なくなっていく…。

チヨはもう何もできない。



ただ、ただ、心の中で母親を呼ぶことしかできない———。









そうして、チヨは一人身になり、母親が勤めていた、旦那様の御屋敷で、働くことになった。



その閉ざされた門の中で、

どのような出来事が起こるとも知らずに…………。











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