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刺繍のような詩集のような。
第2章 ヴェール
幼い頃から僕は薄いヴェールに包まれて生きてきた。



国を背負って立つ「王子」というパッケージは偉大だ。



僕を大事に守り、

痛みも苦しみも悲しみも、

最小限の衝撃で済むように、

緩衝材の役割で、世界と僕を程よく隔ててくれた。



エアパッキンは外からの衝撃には強いけれど、

中身の腐敗は、どうしようも無いね。



君と出逢った時、

僕は「王子」になる意味も魅力も宿命も理解できていなかった。



秘密の花園で出逢った君は、

腐りかけた僕の声に耳を傾け、

僕を包む厳重なヴェールを細い指で何度も取り払ってくれたね。



帝王学とか常識とか正義とか

通り一遍の、「ちゃんとしたこと」を学んだ僕は、

誰を愛すべきかも刷り込まれてる。



国を治める人間は、正しい行いをしなくちゃならない。

皆が幸せな世の中を作るために、正しい選択をする。



例えば、

文章は、主語と述語で構成される。

物語の終わりはハッピーエンドにする。

憎悪と恐怖と悲しみは要らない。


とか。


そんなようなことだよ。



新鮮な空気を吸った今、

実にくだらない、誰かが勝手に決めた見えない拘束だ。

皆、何のルールに従って安心してるのかな。

そのルールは誰のルールなんだ?

ルールの意味さえ分からずに、用意された道を歩いて安心するなんて、

僕には理解が出来なかった。



僕の言葉に笑った君が、悲しげな顔で俯いた時に、

僕は素早く気付くべきだった。

君が抱えた病と、残り少ない時間に。



君を助けるために必要な薬は、「王子」になれば手に入るけれど、

「王子」は全ての民のために動く人形だ。

勝手に薬を横流しすることも、

素性の知れない君を部屋に呼ぶことも、僕らのルールでは「禁止事項」になる。

「王子」でなければ、僕は金も権力も持てない、ただの若い青二才だ。





月も出てない暗い夜、僕は初めて、「悪」と呼ばれる選択肢に手をかけた。

だって、それは僕にとっての正しい行いだ。

「正義」なんて言葉は好きじゃない。

僕はただ、守りたい人のために動いただけだ。





城の自室を抜けだして、薬瓶を握りしめ

僕は、君が待ってる、あの花園へ走った。

月明かりの届かない暗闇を、黒いヴェールみたいに身体にまとわせながら―――。




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