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君はカノジョ
第2章 聞いてよ、桃子さん
桃子さんとはこんなどうでもいい会話を延々続けられるのが楽しい。
気を許してなんでも喋ってしまうのもどうかと思うけど、金原さんに関してはフラれてヤケ酒に付き合ってもらってからずっと話を聞いてもらっている状態だ。
桃子さんに喋ってしまうと大抵のことがどうでもよくなってしまうのが不思議だ。

桃子さんが落ち込むようなことがあれば俺がなんとか力になってあげたいな、と本気で思う。あといい人が見つかればいいな、とも。
これが男女の友情ってやつなのかな。

「ごちそうさまでした~」
机にお代を置いて席を立つ。定食屋の扉を開けて外に出るとなんだか雲行きが怪しかった。
「あれ、天気悪い」
「台風来てるらしいからねぇ」
ええ~全然知らなかった。そう思ったのを見抜いたのか、桃子さんはにやにやして言う。
「半田なんにも知らないうちに会社に取り残されたりしそう」
いやいや、さすがにそんなことない、と思うけど近いことはやりそうだな、なんて自分でも思う。

俺たちの勤めている会社は埋め立て地にあって、本土とここを繋ぐ橋は二本しかない。電車も走っていないから、バスを使うかマイカー通勤になる。
橋は結構長いので、一応歩道はあるものの歩きでは相当きついらしい。だからバスがストップして車もなければ会社に泊まる羽目になる。それか少なくない金を払ってタクシーか。
バスの最終は10時半で、バス通の人間はこれを理由に残業は10時まで、と堂々と言える。だけど最悪の場合10時半になっても仕事が終わらなければ泊りが決定する。
「お泊り残業システム」と、先輩社員が嫌ぁな笑いを浮かべて言っていた。
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