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ネムリヒメ.
第22章  あの夜の…….




う…そ……


「雅……ッ…」


聖くんが伸ばした手は届くことはなく、その代わりに耳に届く驚きと困惑の入り交じった声


「っ……!!」

「ちょっ……!!」


一気に穏やかじゃなくなる渚くんたちをよそに、

その彼は後頭部を包み込んだ大きな手で髪をそっと撫でると、涙に濡れた頬を胸元へと抱き寄せた

雅…くん…


「…泣くな」


…………!!


「…ッ……ふ…」


彼に抱き締められたことに驚いているはずなのに、その優しい声に更に嗚咽が込み上げてくる

どんどん溢れる涙で冷たくなる雅くんのシャツ

だけどアタシを抱く腕は温かくて


そう…

温かくて…

温かくて、苦しい…


「ふ………っ……」

「ちぃ…」


苦しい…


「泣くなよ」

「っ…」


胸が、苦しいよ…


穏やかじゃない空気のなか、包み込むその腕だけは優しくて


ねぇ…

それを知ったら楽になる!?

それを聞いたら思い出せる!?

思い出したら…

思い出したら不安に怯えなくてもいいかな…


ごちゃごちゃで苦しい胸のなかで、激しく渦を巻いて込み上げてくるそんな想い


「っ…ぅ……」


切なくてしゃくりあげながら顔をあげると、そこにはアタシだけに向けられた優しい瞳があった


「目、真っ赤だ…」

「ッ…」


そっと頬に触れた綺麗な指先が、濡れた睫毛から零れる滴を掬い取っていく


アタシはその優しさにすがるように雅くんのシャツをキュッと握りしめた






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