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ネムリヒメ.
第22章  あの夜の…….






震えるカラダを包み込む薔薇の香り

印象的なその香りが真っ白な頭のキャンバスに、ごく近い記憶の映像を写し出そうとする


「だ…れ……」


顔を仰け反らせながら絞り出した震える声

すると、耳元から軽く笑う声がしてカラダに回された腕が緩められた


空気が動いてベッドの軋む音がする

銃口をアタシの喉元から離さず、静かにベッドから降りるオトコ

アタシの瞳が自分の姿を捉えたのを確認すると、オトコは少し長めの前髪から覗かせる甘いマスクで静かに微笑む


モード感漂う全身オールブラックで揃えられた身なり…

MIXパーマがあてられ、オシャレにセットされたスモーキーアッシュのショートミディアムヘア


「………!!」


そこから漂う印象的なローズの香りと耳に残る柔らかなハスキーボイスにアタシの瞳は大きく見開かれる


この…ひと……


"っ…!! すまない"

"ケガはしてない?"


渚くんと行ったバー・ラウンジをあとにして立ち寄ったパウダールーム

そこから出てすぐに誰かとぶつかったことを思いだす


はね飛ばされ壁に押し付けられ、痛みに動けないまま崩れ落ちそうになったところを助けてくれた彼

ご丁寧にも、壁に触れた肩と背中をパンパンと払ってくれて立たせてくれて


"申し訳なかったね…"


謝る間もなくそう言い残して颯爽と立ち去っていったあの時の…


でも…

どう…して…


「…………」

「どうしたの、そんな顔して…」


驚いて言葉を失っているアタシに彼は口元を緩める






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