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ネムリヒメ.
第23章 薔薇の刺、棘の鎖.
「今はちょっと困んだ、あんなヤツでも…。用がすんだらどんだけヤり合おうがお前の好きにして構わねぇから、今動けなくすんのは勘弁して」
「…っ……」
半ば凄む渚に無言のままカクカクと首を縦に振る望
それを見た渚は少しだけ表情を緩め、望の胸元を捻りあげていた手をようやく緩める
「…悪いな、望」
「………」
渚から胸元を解放された望は一気に力が抜け、ガタンと音をたてビーチチェアに腰を落とす
そんな望に渚はもう片手に持っていたドリンクを手渡した
渚が差し出したのはロイヤルミルクティーだ
大好きなそれに、望の表情がパッと明るくなる
サイドテーブルには飲み干された同じグラスが3つ程置かれているのだが、望は軽くストローでかき混ぜてから口に含む
そして満面笑みを渚に向けると、どうぞお好きに…と、ご機嫌にオッケーサインを作って見せた
望をミルクティーで黙らせた渚は、バシャッとたてられた水音に足元に目を落としながらゆっくりと振り返った
無論、視線の先にあるのはプールから上がりかける水浸しになった雅の姿だ
渚は自分のサイドキックで見事にプールにダイブした雅に歩み寄ると、まさに水から上がろうとしていた彼の肩に足をかけた
「なぁ…雅…」
「ッ…!!」
プールサイドに手をついて、上半身を水から持ち上げた状態でビクリと硬直する雅
顔を上げれば、静かに怒りを剥き出しにする魔王の姿がそこにある