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あい、見えます。
第4章 見落とさないで
白杖で分かる世界は狭い、と、遥は思っている。

点字ブロックのような硬さのあるものならばまだしも、薄いものや柔らかいものには気付けないし、以前、散歩中に座っていた犬の尻尾を突いてしまった時は、随分、その犬に吠えられたものだ。
知らないうちに落ちている買い物袋が白杖の先にまとわりついていて、進む度にガサガサと妙な音がしていたこともあるし、今日は妙に白杖が扱いづらいと思っていたら、帰宅してから先端にガムが付いていたことに気付いたこともあった。

白杖で分かる世界は狭いし、白杖で気付ける異変も多くは無いと思う。

それでも今、違和感に気付いたのは、ほぼ毎日、この短い距離を歩いていたからだろう。





(本、かな)

咄嗟に思いついた考えに、遥は白杖の触れた辺りに腰を下ろした。
ワンピースの裾が無作法に広がらないように気をつけて、足を揃えてしゃがむと、そっと手を伸ばして杖の先を探る。

(あ…)

何かがある。指に触れる。
遥が鞄と一緒に持っている席札くらいの大きさの、それは―――。

(手帳?)

片手で拾い上げてみると、掌くらいの大きさの手帳か何かのような感触があった。
カバーの手触りは本の装丁とは思えない柔らかさがあるから、これは革かもしれない。
布とも思えた。

掌で確認した限り、図書館で貸し出すバーコードのシールも貼られていないようだから、多分、誰かの落し物だ。
図書館の床は防音効果を高めるために、布製のマットが敷かれている。
そのせいで、落とし主は自分がそれを落としたことに気づかなかったに違いない。

遥は立ち上がると、その落し物を持って受付に向かった。
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