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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ

 パレ・ド・カディナールの荘厳な大広間。

 立ち並ぶ柱の間を長々と伸びるレッドカーペットの果てに立ち、ノヴァリスを待つのは、この白亜の離宮の主、枢機卿その人だった。

 王党派との長きに渡る政争を終わらせた彼は、軍の統帥権をも掌握し事実上この国の支配者であると言っても良かった。

 四十代に差し掛かろうかという年齢。若い頃は「美青年宰相」と、王都の女たち――とりわけ、貴族階級の婦人方を騒がせたその容色は衰えを見せてはいない。が、度重なる政争の中でその眼光は鋭くなり、並ぶ者なき権力を手に入れた今、顔つきもまた威厳が増している。

 その王都の最高権力者がゆったりと、それでいて重々しい低い声でノヴァリスの名を呼んだ。

「ノヴァリス・シュープルーズ……そなたを近衛隊長に任命する」

 畏まって彼の前に跪くノヴァリスは伏せていた顔を上げた。

「謹んで。この身に替えても王都の警護は果たしてご覧に入れます」

 明瞭な誓いの言葉が彼女の口から発せられる。

 そう、これは単なる近衛隊長の任命ではない。ノヴァリスは王都で初めての女性の兵士であり――そしてその働きぶりを認められ、隊長へと昇格させられた、これもまた初の女隊長なのであった。
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