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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ

「我々がただ恨みを晴らす為に、お前たちを、あの女を襲撃したと思うか? 殺す価値もないようなあの女の命を奪うためだけに?」

 言われてみればそうだった。

 いや、たとえ民衆から嫌われていても、そして褒められた暮らしぶりではなかったとしても、夫人を殺しても良いなどという理屈には賛同することはできないし、人の命に殺す価値などありはしないのだが、確かに、理屈に合わない。

 ただのパーティに向かうための馬車を襲った所で、得るものは何もないのだ。せいぜいが夫人が身に着けていた高価な装飾品ぐらいのものだろう。

 彼女が殺害されたとなれば、威信にかけて王都は追手を放つ。
 見返りとしては見合わない代物だ。


 そのことに思い当たってノヴァリスが顔を上げると、フェリックスの冷徹な眼差しがピタリと彼女を捉えていた。

「俺達の狙いは、お前だ」
「……えっ!?」
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