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真夜中の贈り物
第16章 ボイストレーニング
 才色兼備。引っ張りだこの才能のせいでスケジュールは分刻み。それでいて、この通り気さくで偉ぶることもない。他の後輩達からも慕われている。

 強いて欠点を探せば、発言がたまにユニークすぎてついていけないことがあるということぐらいだ。しかし、それもクリエイターにありがちな常識外れな部分、そんなご愛嬌と言えばそれまでのこと。

「あの、先輩……」

 亜優は少しためらいがちに鏡花に声をかけた。忙しい彼女だから、きっと何か仕事のために早く出て来たに違いない。邪魔はしたくなかった。

 だが、それでも相談せずにはいられなかったのは、自分の発声方法についてそれだけ悩みが大きかったからだろう。

「なんだい?」

 まったく屈託のない顔で応じた鏡花が、学生鞄を手にしたまま舞台に向かって歩を進める。
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